I was stage gazer

星を追う

赫い月が上るこの荒野で

 

3日間に及ぶ高円寺通いが終わり、やっぱり最初に見たときとは印象が2度目、3度目で変わっていくなと思ってあえて最初の感想は書き直さずに全体的な感想を書き直してみた。

 stargazer9.hatenadiary.com


 

(1/24 追記)

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事前に日本のいちばん長い日を見た時も、1回目を見た時も戦争を終わらせたくなかったのだと思っていて、だからクーデターを起こしたのだとばかり思っていたけど、

本当はそうじゃなくて、それぞれの戦争を終わらせるために起こしたのかなと思った。

自分が今まで守らなければ、命を賭けてでも守らなければいけないと思っていたものが無条件に奪われてしまうかもしれない、と思った恐怖とか終戦を受け入れられる事への抵抗感とか。

原子爆弾が投下された時に”太陽”が爆発した、っていうけどあれは自分たちの心の拠り所(太陽は天皇をイメージする言葉でもあるし)を奪われたみたいなところもあるのかなと思って。

太陽って多分永久不滅のものだと思っているしそれが爆発するってまあすごい衝撃だろうし、それくらいの事が起きたというかポツダム宣言の受諾はそれくらいに衝撃の走る事だったんじゃないかと。

ポツダム宣言を受諾したら、本当に”太陽”が失くなってしまうな。

軍人であるからこそ、戦争に対する責任も負わなければいけないという気持ちが強くて

”そうやって教えられた”、”そうやって生きてきた”人たちだから

明日戦争が終わると言われてもそれを受け入れる事はただ”死”が待っているだけだし

肉体の死じゃなくて精神の死を恐れたのかな、とか。

まあここら辺は史実の部分も関わってくるからあくまでこんな風だったのかな、と

思うしかないけど。

クーデターを起こした組の掲げる理想を”赤い月”だと思っているんだけど

それぞれが赤い月を見ているというか、多分みんな同じ月を見ている訳じゃない。

 

タケシタがこれは葬式だ、という。

タケシタはクーデーターをわざと失敗させたと思っているんだけど、クーデターを起こさせまいとするよりもとりあえずやらせてでも失敗させる様に仕向けているんじゃないかと思ってる ”日本でいちばん長い日” で阿南が陸軍をぎりぎりまで抑えてた。っていう描写があるから阿南の義弟だったタケシタもその意向に沿うというかやっぱり国を守る為、で。

東京に原子爆弾が落とされれば、それこそ世界地図から日本が消える、って仮にクーデーターが起こってたらありうる可能性があった未来。

仲間を裏切っても守りたかったんだなって、この国を。陸軍は理想主義、海軍は現実主義と言われてた様だけど(wiki)、600万人の将兵が立ち上がれば!っていう台詞にもそれを感じる。

ここまで来てまだ戦う力があるのかと。

戦争を知っている様で知らない様な、血を流したものから出世するコガさんの言葉だけど血を流した事が無い者があ上に立つ事もないはず、なんだけど。

たくさんの犠牲の上に自分たちがいる事、どこかで誰かが戦っている事を自覚している様な台詞も出てくるし

どこかあの人たちは夢見がちで、という気もする。

でもトウゴはサイパン、ケンジはフィリピン帰りなんだよな…

そもそもクーデターを止められなかったのかって話になるけどあの会議の時点で止めてたらタケシタが殺されるかしてただけだろうし、ぎりぎりまで引き延ばして誤魔化してって苦しいなと思う。

後は私が戦後の物語を語りましょう、って自決する阿南を見ながら生きる事を決意させられる事も。

サイパンから生き残ったトウゴも生き恥を晒して、って死んでいく仲間達を横目に自分が生きている事を否定して

トウゴは生き残った者としてのトラウマとか戦争のPTSDを抱えているんだと思うけど。

PTSDの症状には幻覚、がある)

そんなトウゴが見る妄想、サチコ。生きるための妄想なのかなと思う。

トウゴとサチコ、2人で見る赤い月だから、赫い月なんだと思うし、明日を迎えに行くために宇宙飛行士は不死身じゃないといけない。

自分の足で歩いて明日を迎えに行く。

多分PTSDは戦争が終わってからもずっとあったんだろうなってトウゴは2回も”生き残って”しまった。

そんなトウゴが孫が可愛いって言えたときは本当に幸せだったと思うし、

”明日佳”って名前をつけたのはきっとトウゴだろうと思ってるんだけど、明日が佳いってまた思えるようになったのかなって。

もしかしたら明日佳が生まれるまで”待ってる”仲間達の話は忘れていたんじゃないかと思って、

サチコがトウゴが忘れてしまったら彼らは永遠に”待つ”事になるっていうから。

でも”待ってる”2人は何を待っているかももう忘れてしまっているし、

どこで待ってるのか(多分時間軸は宮城事件の最中ではない気がする)

もうそこはファンタジーだから、って考えてしまってもいいかなとか。

明日佳が高校卒業以来実家に帰ってなかった理由は大好きだったおじいちゃんが

もう何もかも忘れてしまってまるで別の人になったようなのが嫌だったのかなって

勝手に思ってる。トウゴに名前を間違われて怒るのはまたおじいちゃんにちゃんと名前を呼んで欲しかったのかなって。

明日佳って、多分明日佳は自分の名前が好きなんだろうなとか。自分の名前に込められた願いを知って

明日に向かって歩き出したんだな、とか。

 

トウゴは思い出さなくちゃいけない事をずっと忘れたままだったのかもしれないし、

自分の死期を悟ってまたそれを思い出したのかもしれない

多分トウゴにとっての戦争ってずっと終わってなかったんだろうなと思ってる。

未だに魂の半分はあの宮城の周りを走り回っているって言うしずっと行けなかった事を後悔している。

トウゴに録音盤を探しに行かせたのはコガさんがわざとやった事だと思っているんだけど

わざと遠ざけた、というか。これ以上関わらせたくなかったとか。

シイザキがイダに後ろ指さされて生きてください、というのも。多分生き残る方がよほど辛い。でもそれでも生きていて欲しいと願える事は優しい。

明日は迎えに行かなきゃいけない。

イシハラがすまん。コガの我儘だ、というのはトウゴだけでも救いたかった、と思ったコガの我儘という意味なのかなと思う。

コガさんのぎりぎりまで悩んで迷っている感じがとても好きで。ハタナカみたいにシイザキみたいにトウゴみたいにイシハラみたいに思い切れない。

家族の事とかそれこそ大御心に従わねばという忠誠心とか。熱に浮かされる、理想に燃える仲間達の中で1人戸惑い、迷うというのがとても好きで。

人間臭い、と演じたシオンくんもブログに書いていたけど本当に人間くさくて愛おしい人だ。

でも結局あくまで軍人として在り続ける事が自分の戦争です、と言うんだけど迷ってまよって”軍人”である自分を選んだんだな。

あとウエハラが航空司令部に行って誰もいなかった事に安堵して『良かった…』っていうのが本当に苦しい。学生であったみたいだし本当に戦争を知らなかったんだなって。

自分のした事を抱えきれずに耐えられません、って死んでいくとか。何で未来を奪われなきゃいけなかったのかとか 考えてしまう。

 

 

どこまでが真実で、どこまでが妄想なのか。

 

 

見ている私もどこまでが感想なのかどこまでが妄想なのかよく分からないけど、

本当に見た後にどうすればいいのか、とかこのお話をどう受け止めればいいのかと考える事がある作品は好き。

あとキャストの皆さんの演技がめちゃくちゃ熱くて本当に良かった。

見られて良かったって本当に思うから次の予定も早くお願いしますエムキチビート

 不死身の宇宙飛行士の理由が最初分からなかったけど、

例えトウゴが死んだとしても誰かが赫い月を目指す話を覚えていれば宇宙飛行士は死なない、不死身で居られると思っていて誰かが覚え続けている限り宇宙飛行士は不死身。

 

いつまでも赫い月に向かって歩き続ける、宇宙飛行士がずっと居ますように。

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1/24 追記

 

赫い月、台本を読むとみんな赤い月だと言っている、赫い月はやっぱりサチコとトウゴ2人の赫い月なのかな。

他の人がそれぞれ見る月はそれぞれの赤い月なんだけど(実際ワイヤーでぐるぐる巻かれたようなやつが複数あった)トウゴとサチコが見上げる赫い月は頭上に輝くそれ一つだけだったのではないか。

 

エンタステージでのあらすじというかレポが面白かった

物語の中では、二つの時代が交互に描かれる。一つは1945年8月、太平洋戦争末期。二人の軍人が戦争について、聖書の福音について、とりとめもない話を続けながら何かを待っている。もう一つは、現代の正月。ある理由で久しぶりに実家に帰省した女性は、誰かを待っている。

物語は、“赫い月”や“不死身の宇宙飛行士”というファンタジックな言葉を中心に置き、幾重にも重ねた構造で包まれている。

enterstage.jp

祖父は続ける。
今も大切な仲間が二重橋の先で、何かを待っているのだと
二重橋の先、板下門の手前、そこは赤い月が昇っているいる場所。
彼らはずっと待っている。
何を待ているのかも忘れるほど疲れ果てて、絶望して、希望して、待ち続けているのだという。
何かを―――

pg2_akaitsuki

エムキチビート公式からのあらすじ

 

そういえば明日佳もずっと待っているんだな、と思って恋人が来るのを。

明日佳が電話を取るたびに時間軸が現在へ、と戻る。

”待っている2人”はケンジとジロウはもちろん明日佳も待っているし、トウゴも待っている、のかなと思って(でもトウゴが待つものがお迎え?くらいしか思いつかない…そこはサチコを待っているのでもいいのかもしれない)

明日佳も待っているはずなのに度々待っている事を忘れてトウゴの妄想に浸っているし、ケンジとジロウも何を待っているのか段々わからなくなっている。明日佳の待っているものもどんどん遅くなっていくんだよなとか思いながら。ダブルミーニングじゃないけど”待っている2人”にも二重に意味を持たせているような気がしてしまう。

ケンジとジロウが待っているシーンは2人だけだしあの時間と空間はまた宮城事件の最中とは別物だし、サチコとトウゴが出会う、2人だけのシーンもまた現実の時間軸とは切り離されているのかなと思ってるから何重にも重なる構造になっていて本当に考える事が多い。

史実なんだけどファンタジーで、ファンタジーだけで片付けられない部分多いんだよ!って思うし、実在の人物を演じる事への畏怖とか、迷いとかあったと思うし本当にお疲れ様でした。

明日佳が”不完全な娘”というのが腑に落ちなくてまた毒親なの?*1と思ったけどあれは明日佳が自分の事を卑下して、否定して言った言葉なのかと思って、良い子で居なくちゃと思っていたとか。痛いと言えなかった子だったとか。

ここらへんは本当に想像でしかないしよく分からないなと思うけど。

 

すごく恐ろしくて印象に残っているのが蝋燭の炎が灯る映像が 陸軍の勉強会のときとか、クーデターの計画を立てているときとかに背後に映し出されているんだけど

その蝋燭というか炎が大きく左右に揺れる。炎だけじゃなくて蝋燭が左右に。

催眠術をかけられている様な気持ちになったんだけど狂気が加速していくシーンだったから余計に。この熱に飲み込まれていく様な。あれはなんだったのだろうなってまた考えたくなくなり。

 

キャストの話もちょこっと、

秋元くんはペダステ以来(IH3日目)で正直に言うと、村井さんのあとでエムキチの主演って大丈夫か?と思った。エムキチの主演って体力と精神力を試される、と勝手に思っていて大丈夫かな?と思ったけど本当に秋元くんしかできないトウゴだった、等身大で一生懸命、本当に一生懸命という言葉が似合うなあと。だからトウゴなんだと思った。秋元くんの演技はチューニングを合わせる様な演技だと思った。感覚的な話だけど。

 

コガさんに相当思い入れがあるから、シオンくんのコガさんよかった!シオンくんは何故か去年からちょこちょこ見てて*2特にハッシャ・バイで見た時が好きだったんだけどエムキチで見られてよかったなと思ったしコガさんがもう…!コガさん!!!!!!

 

あと別名劇団元吉*3の山本くんも信頼されてるからこんな役を任されたのだなと思うタケシタで、とても良かったし、タケシタだ!って二回言ったのはアピールなの?カキツバタからの振り幅の差よ!と思ったし山本くんの演技は見るたび好きになるなあ…至極真面目なタケシタとモブ役の時は割と自由でニヤニヤしてた(笑)

あとアイワズライトの時からのにわかファンをしている長谷川あかりちゃんがまたすごく好きになった。アイワズライトの時もうまい子だなぁと思ったけどさらに。勘の良い子というイメージもあるんだけど。感情を抑えて喋るとかまたそれを爆発させるとか。感情の一気に溢れ出すのが良かった

サチコの小野川さんは本当にお美しいし、コミカルでかわいらしいし、虚構の劇団は本当にいい役者さん揃い。

ウエハラはもうあの良かった、に全てが持って行かれる。本当にあのセリフの持つ重さ、意味に泣いてしまう。あと梅津さんめっちゃお顔が綺麗。

 

こんな感じで本当に受け取る人によってどう見るか、というところの多い作品だから他の人のこう見た!っていう感想が欲しくなる。私にとっては戦争ものだし、青春ものというか自分の信じるものを守りたいと願った話というか、そうとしか生きられなかった話というか。まだまだ考えたいことはたくさんあるかなと思ったし、次は音劇だと聞いて本気出す!と思った

 

*1:アイワズライトの真白の母親

*2:さよならソルシエ、ハンサム落語、ハッシャ・バイ

*3:エムキチ作品への客演が3作、別の元吉さんの演劇ユニットパブリックガーデンへの出演が2作