I was stage gazer

星を追う

マームとジプシー ロミオとジュリエット

今更去年の12月に見た作品の話を。印象に残ってる舞台って何度でもその作品の話したくなるんだけどこの作品がまさにそうだったなっていつかTake me out の話もいつかしたい気がする…自分の中で処理が難しい舞台ってなかなか感想を書けない。

マームとジプシーは『Cocoon』の印象があっていつか見てみたいなと思っていたところにたまたま予定のタイミング的に見に行けるかなってちらちら気にしていたんだけどロミオとジュリエットはフライヤーのビジュアルがヒグチユウコさんだし、衣装が大森伃佑子さん、あと音楽の石橋英子さんも昔拝見した事があってそこも興味を惹かれたポイントで、ほぼ女性キャストで演じるロミオとジュリエットというところも気になった。

役者さんは初めて拝見する方ばかりだったんだけどキャストのほとんどが女性で2階席から見たけどくるくる回ったときのスカートの回転も本当に美しかった。まずはとりあえずビジュアルが最高だったという話から。

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プレイハウス自体も初めて行ったけど奥行きがすごくある舞台で、後方にもセットが組んであってあと横の方に椅子があって袖がなかったんじゃないかな?舞台裏にはけずにアクティングエリア、みたいな造りだったはず。

セットは固定式じゃなく、舞台もくるくる回ったりはしなくてセットを何枚かの板を組み合わせたのを折りたたんだり広げたりして使っていてその板の組み合わせによって室内空間になったり壁になったりするのも面白かったんだけどがっちりセットを作り込まれるよりもそうやって空間を生み出したりする方が個人的な好みとして好きなのかなとか思ったり。洗濯物を干すみたいなシーンが印象に残っているんだけどそんなシーンあったかな…あったはず。籠を抱えて噂話をする女中たちとか。

お話はロミオとジュリエット、の逆再生。この逆再生という手法がどうやってやるんだろうと不思議だったんだけどロミオとジュリエットが出会ってから死ぬまでの5日間をずっと繰り返す。映画みたいなつくりのお芝居だなと思った、逆再生の手法使う映画を見た事あるからかもしれない。ロミオとジュリエットは既に出会っていて、ベンヴォーリオも死んでいてジュリエットの傍にロミオがいる、ところから2人が出会う仮面舞踏会のシーンまで。ロミオが”夢を見た”ってセリフもリフレインで繰り返される、最初に聞いたときよりもお話が進んでいくごとにこのセリフの持つ重みがどんどん増していって気がつくとびっくりするくらい泣いてしまっていて自分でびっくりした。どうやってこのお芝居をつくってるんだろうな?お稽古とかどうやってるんだろう?という不思議さとロミオとジュリエットの死のシーンが何度も繰り返される事でどうしてこの結末を変えられないのかという無力感とかそれでもとても美しくて。ロミオは何度も同じ夢を見るし何度もジュリエットは冷たくなったロミオのそばで目を覚ます。

マームとジブシーというか藤田さんの演出にリフレインという手法はよく使われるらしいのだけどこのお話においてこの繰り返されるリフレインによってロミオの絶望がどんどん増していくしロミオの抱える閉塞感とか絶望感とかを最初はうまく理解できなくても繰り返される事で見ている側にも積もっていく感じがすごく良かった。

音楽はドラムだけ生演奏でロミオのあるシーンで能の乱拍子みたいに、ロミオの足音にドラムで合わせるところがあってそこがすごく好きだった。ドラムの山本達久さんも出演者としてクレジットされていてオケ、というよりは本当に出演者としてそこに居たのが不思議だったんだけどドラムセットは上手端に置いてあってそこにいるんだけどいないような距離感でそれも面白かったな。

うっかりサントラを発掘して懐かしくてあの感覚を思い出したくて今更感想を書いてみたかったんだけど分かりやすくはないというか多分ちょっと気取って小難しいものが好きな人に受ける作品なのかなという気はする、美術館とかの展示作品のような感じというか突付きにくさはあるけどうまくはまるとものすごく好きなんだろうなという気がする。どんな作品もそんなものなんかな。

私はまたマームとジプシーの作品見てみたいと思った。

音楽がめちゃくちゃよくてこれもうっかり涙腺を刺激された理由なのかなってまたサントラを聞きながら思い出した。

いつまでたっても語りたくなる作品に出会えるのは幸せだなと思った。