I was stage gazer

星を追う

春のめざめ

enterstage.jp

性に目覚める14歳って何か露骨な…大人になる事への目覚めというか、新しい自分のめざめ、っていう感じだった。ずっと思春期っぽい閉塞感に満ちたお芝居なのかと思ったら最後の終わり方が大分開放感、というかすっきりした感じで終わるなぁと思った。中盤あたりが見ていて一番息苦しくなるような感じがした。

女の子の方が男の子より早く大人になるというか自覚させられる気がするんだけどヴェントラは随分子供だったなと思った、あと子供でいて欲しい親の気持ちもあるだろうけど子供への大人の変化に自分自身もそうだし親がそれを認められずに抑えつけようとするとか、127年前の戯曲で〜っていう話をされていたけどそいう部分は時代が変化しても普遍的な部分だし、同じ経験をした事がなくてても思春期のあの感覚は誰しもが経験するものだからやっぱり自分の事を思い出さずにはいられないな、と思った。どんなお芝居を見ても自分の中にあるものを思い返してしまう事はよくあるけどこう言う題材においては特に。

何となく見ながらbareとかリリィシュシュのすべてとか、あと別に堅苦しい言い回しが多いとかではないんだけど現代っぽい音楽との組み合わせ的になのかマームとジブシーのロミオとジュリエットを思い出した。bareはロミオとジュリエットをモチーフとして入れているし、女の子を妊娠させてしまう、とか親からの抑圧みたいなところでもすごく近いものがあるなと思った。ヴェントラが干草小屋で寝転がっただけよ、っていうのは14歳の母ってこんな感じなのかなとかそれは見てないけど

あと私は過ぎてしまった時間の事を思い出すだけなんだけど前の列にしそんくん目当てだと思われる女子中学生のグループがいてどう思うんだろうなとかちょっと気になった露骨なシーン結構あるけど大丈夫?とか。終演後のポストパフォーマンストークで白井さんが露骨なシーンがあるから実際14歳の子たちに演じてもらうわけには〜ってお話してたけど見る側に実際若い子たちがいるのはどうなんだろうな。今は何も思わなくても何年後かに思い出したりするのかな。

個人的に自家発電シーンで女神!っていう言い回しがすごく好きで女の子たちが次に生まれ変わるなら絶対男がいい〜って言うのすごく分かると思った。あの男の子にしか分からないんだろうなって感覚が結構羨ましかったりする。また女に生まれたいっていうヴェントラはすごく幸せに育ってきたんだろうなと思ったしやっぱりまだ子供なんだなっていうにも思った。

モーリッツが自殺する前にホイップを添えなくちゃっていうのも何かすごく好きだった。死ぬ前に凄く生を感じる行為をするのかって。

白い塗料を壁にベタッと塗りつけるのを最初見た時は壁に落書きとかするようなちょっと悪ガキなのかと思ってたんだけどお話が進んでいくごとにそのシーンがめちゃくちゃ出てくるから何となくあの塗料の意味もわかってくるんだけどそれにしても青少年凄い。百科事典には知りたい事が載ってない!とか時代を感じさせる…今の子は何でも間でもネットで調べられるし触れる機会も多いもんな…

舞台がぐるっとアクリル板で囲まれているだけのセットであと上に通路?があるくらいでどうやって出ハケするんだろうと思ったら結構客席使って出たり入ったりしてて2階席に座ってたから見えなかったけど客席まで巻き込まれる感じは1階席の方が強いんだろうなと思った。何となく2階席から見るとメルヒオールの放校処分を決める学校の教師たちみたいな目線の気がする。子供じゃなくて大人の目線、というか。あのアクリル板越しに見えるもの、の演出も面白かったんだけどアクリル板越しだから声も届かないのだろうかとか、あと壁に向かってばんばんうちつけるのとか。思春期…!教師たちが仮面?をつけているの恐ろしかった、表情が見えなくて同じ顔を貼り付けている大人たち怖い。親たちは素顔で向き合ってくれるけど教師たちは”教師”という体裁を持ってしか接してくれない。

モーリッツの葬式のシーンで大人たちはモーリッツの事よりも両親についての話をする、男の子たちは伝言ゲームのようにもーリッツの死体の話をしたあとにまた何事もなかったかのように宿題の話をする、女の子たちはちょっと感傷的に死を悼んでいるのかなという感じがしてこの作品を見る側の年齢、性別によってこの作品をどう見るかっていう感覚の違いを劇中で見せられた様な気がした。

30年後には笑い草だろうなの彼らが凄く好きで砂糖とシナモンの〜飲み干してしまえばいい、とか笑い草だろうなって皮肉りつつそれでも愛してるよ、っていうのとかあの刹那の感じが凄く愛おしかった。基本的にメルヒオールが自分の事しか考えてない、というか自己愛の強い子で何だかな〜と思ってしまったからからあの子達がいちばん好きだった。結局メルヒオールは自分自身を赦せる、し救えるし。行き場のない閉塞感から解放される。

まあみんな自分勝手だなと思うんだけどそれにしてもヴェントラを幼く汚れない存在に描きすぎかなと…あの時代的にはあの人物描写で全然おかしくないのかな…

メルヒオールの母親がそれまでは庇っていたのにヴェントラの事と、イギリスへ行こうとしていた事を知った時のばっさり切る感じがとても好きだな〜と思ったヴェントラの件で嫌悪を示したのかどっちだったのか覚えてないけど可愛い息子から”男”だと知った瞬間の、子供をおもちゃだと思ってる、って事はないんだろうけどやっぱり子供だと思ってるから許容出来ている範囲の事を子供じゃない、って思わされてバッサリいくのは親というか女でもある、っていう感じがする。

モーリッツの栗原さんをTake me outぶりに拝見したのだけど役にも本人を見てしまう感じがする演じられてる役が自分を否定する様な、自信がないみたいな役が多いせいなのかもしれないけどそこが面白いなとも思うし全然違う本人を思い起こさせない役でも拝見してみたいのだけど。あとラストシーンで白塗りだからカテコの前に他の人が挨拶している時に後ろで顔をゴシゴシ拭いてたのが何か可愛かった白塗りの間前では出られませんもんね…そしてそのあとその布がずっと放置されていたのが気になった。

それにしてもしそんくんの人気っぷりにびっくりした…メディアに出てる子ってやっぱり強いんだな〜って。劇場に客を呼べる役者、みたいな話を最近むらいさんが某びじゅぼ日記に書いていた事もあってこう言う事かって。作品の内容的にそんなに人が呼べる内容ではないと思うんだけど、しそんくんで客が呼べるの本当に凄い。しそんくんの一挙手一投足に沸く感じすごかった(トークの時に)

アダムスファミリーで拝見する予定のある白井さんの演出を一足先に見てみたいと思って見に行ったんだけどあのライトの使い方がとても印象的だった、あと特にセットを作らず想像力に〜っていうのも見てる側にそれぞれ想像させる意図なのは分かったし、脚本と役者を生かそうという演出なのかなって感じて、でもアダムスは全然違うタイプの作品だろうしと思って見るのが楽しみになった。

個人的に衣装のズボンが七部丈でくるぶしと靴下が見えるのつぼったんだけどあれは成長して丈が足りなくなったのかそれとも元々あの長さなのかどちらにしろ少年って感じのするいい丈の長さ…