I was stage gazer

星を追う

幽霊病(時代錯誤冬幽霊 足跡姫)

ソワレは芸術劇場で足跡姫を見てきたf:id:a9azzzzz:20170121002031j:image

 

勘三郎さんへのオマージュとして書かれたこの作品、どうしても見たくて本当に見られてよかった。

お二人の関係はちらほらご本人達が語る話を拾い読みしていたのと、勘三郎さんにあてた弔辞がとても印象に残っている。

あれはラブレターだなと思ったんだけどこの作品でやっと勘三郎さんの最後の姿に向き合ってまたそこから何をするかを考えたのかなって

勝手に思ってしまった。まあこう言う言い方はどうかと思うけど愛だった。凄く愛を感じた。

"幽霊病"というのが作品中に出てくるんだけど、指先が足が動かせなくなっていく、母音でしか喋れなくなる病気

"いいあい"と言った言葉が"いきたい"なのか"死にたい"なのか分からない事が怖かった。

舞台の上に生きる人にとって死ぬ事よりも怖いのは舞台の上に立てなくなる事なのかもしれないとおもったり。

いつかきっとその日は死よりも早くやってくる。

死ぬ事よりも怖い事ってなんだろうなって考えたけど死ぬ方が私にはやっぱり怖いかもしれない。

舞台の上で起こる事はすべて偽物だから、舞台の上で死んだら幕が閉じれば生き返る、って必死に生き返そうとするのとか

その偽物を愛しているんだなとも思ったり。

お芝居にリアリティを持ち込むとその嘘の世界が崩壊してしまう。

その崩壊した世界で何とか夢を叶えようともがく姉弟と、

嘘の世界を利用して本当を成し遂げようとする人とか。

芸術を愛して生きるものがその愛する芸術(の人)をどうやって乗り越えるかみたいな事も

考えさせられるお話だったのかなとか。

まあ事前に勘三郎さんへのオマージュ、と聞いてそんな風に思うのかもしれないし

芸術を共に愛した戦友だからこそ出来る最高のオマージュだなと思っているし愛だな。

江戸の十役人という役を中村扇雀さんが演じているんだけど(でも多分全部で7役)

ネーミングがまず面白いし早着替えとキャラクターの切り替えが面白い。

いや本当に酷いと言った方がいいのかもしれない(笑)

久しぶりに舞台立つ野田さんを拝見して本当にお元気だなーと思った

相変わらず凄い人だった。

宮沢りえさんが足跡姫という役と3・4代目出雲の阿国という役で

とにかく踊りまくるんだけど足跡姫のときの"動きは美しいけど姿は見えなくて足跡だけが残る、その足跡すら美しい"っていうそれをまさに体現していた。

足跡である模様(桜の木)を描くんけど本当にそれが美しかった。

めちゃくちゃに笑って最後とても泣いてしまった。

本当に面白かったし、舞台に生きる人たちを愛する人には何かそれぞれに感じるところがあると思うのでお勧めしたい。

本当に劇中劇の様な、舞台の上の人がまた舞台の上に上がる姿を見る、という二段階の構造が本当に好きで 

舞台の上で死ねるから幸せだ、という出雲の阿国とその名前を一生残してやると語るサルワカに

本当に愛を感じる。お話自体も女歌舞伎がご禁制の時代に女歌舞伎をご公認にしようとする

3・4代目出雲の阿国の話だから歌舞伎座の話がめっちゃ出てきて面白かったし

セットに花道があって歌舞伎的な使い方をするし何よりあの足跡姫の踊り(足アート)が凄い。

あの動きをあの人数で見る面白さもあり。

本当に見られてよかった。誰かの死を悼むことというよりも忘れることが一番悲しくて誰かがその人の思い出を語ってくれるのならその人は誰かの中でずっと生き続けている事にもなるというのを思い出した。

勘三郎さんを忘れたくなくて作った話なのかなとか。その姿を忘れたくないために。