I was stage gazer

星を追う

月組グランドホテル

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 去年梅芸版グランドホテルを見てとてもこの作品が好きになってしまい、宝塚でもやると知って見に行ってみた。

エリザベートも宝塚版と東宝版両方見てその違いが面白いなと思ったりしたんだけどグランドホテルはもうこの作品そのものが好きで堪らないという気持ちになった。

梅芸版はREDしか見てなくて新演出版のGREENを見逃してしまった事が未だに心残りなので、またグランドホテルが見たい。宝塚版ももう1回見たい…

どうしても梅芸版を先に見たから比較して見ざるを得なかったけど、どちらも本当に素晴らしかった。梅芸版と比較しつつ、がっつりネタバレありで感想を。

 

梅芸版での湖月わたるさんの”死”のダンサーがとても好きだったのだけど、あの死と踊るみたいなところも。宝塚版には”死”が概念として可視化されてなくて”死”は突然訪れる、みたいな感じがした。

お話を事前に知らなかったら誰かが死ぬとも予想できないのでは?とまあオットーが自分の死期を悟ってる、残された時間は短いみたいな事は言うけれど。梅芸版では”死”が常にそばにあって、それは多分オットーにまつわる”死”なのだろうと思っていたら実は男爵に纏い付く”死”の影だった、というのも好きで”死”は突然訪れる。

梅芸版のセットがとても大きいセット(大階段があったり)だったから宝塚版は随分とシンプルなセットだな?と感じたんだけどその分、群舞で見せるシーンが多くて(人数も梅芸版よりも随分多いし)さすが宝塚だなーという要素を感じたり。

梅芸版だと横一列にずらっと椅子を並べるシーンが多かったのに対して宝塚版は左右縦2列かな?に椅子を並べてそこに客が座ってる事も多くてそういう空間の使い方の違いも面白いなと思った。

舞台を二面に分けて、というか上手側と下手側でお話が同時に進行していてどちらを見ればいいのか視線が惑う事も多かったんだけど、下手側にはドクターがずっと座っていてずっと見守っているような、一番客観的に見ている人でもあるんだけど結局はドクターもグランドホテルの客で、グランドホテルを訪れては去っていく人の一人であって、その人の行き交う様をただ見守っているのがグランドホテル、みたいになるのがこのミュージカルの好きなところだなと思う。

グランドホテルが見た人生の一瞬、という感じ。宝塚版のドクターは眼帯をしていて、顔に大きな傷跡があってそのヴィジュアルからもドクターの生きてきた人生を思う事が出来て、そんなドクターが残された時間、”死”についての話をオットーとするのは至極当たり前だと思うんだけど、フラムシェンがオットーに人間はいつか死ぬものよ、とお腹に新しい生命を宿しているこれからの希望、みたいなフラシェンがそんな諦観というかドクターやオットーとは違うかもしれないけれどそんな死生観を持っているのも面白いなというか男爵の死を通して死を想う様になったのかなとも思うけど。梅芸版では最初の方からフラムシェンが妊娠している、というのは明かされてた様な気がするけど宝塚版ではオットーにパリに誘われるまで明らかにされていないのが今ここで告白するのか!とちょっと驚きだった。

男爵が死ぬシーンで梅芸版の椅子を向き合わせしてならべてその上を男爵が歩いて薔薇を散らされる、みたいな演出がとても好きだったんだけど宝塚版では薔薇を抱えた男爵がベットに横たわる、みたいな演出になっていて黒いドレスを着たグルシンスカヤと踊るんだけど”死”の概念がいない分、グルシンスカヤと”愛と死”を踊るのか、というのもとても好きだった。

あと違いとしてはジミーズが全然違ってどっちもコミカルなエンターテイナーである事は変わりないんだけど宝塚版のジミーズは大変エキゾチックな感じだった。衣装だし、肌色も。まずそのヴィジュアルにびっくりした…。

キャストについて触れたいんだけど月組、というか宝塚の皆様にあまり詳しくないんだけど、オットーの美弥るりかさんが大変美しいオットーで顔がちっちぇ…すごい美人なオットーだ…とはわわわとならざる得なかった。いや皆さん本当にお美しいんだけど梅芸版のオットーのイメージとがらっと変わって(当たり前なんだけど)あのさいしょのだぶだぶの背広を着たオットーから、タキシードを新調して見違えたオットーにもまたはわわわわとならざる得なかった…。

グルシンスカヤの愛希れいかさんの男爵からの愛を受けて心を開いていく様子とか、私、踊りたいの!っていう溌剌とした少女の様なグルシンスカヤも大変お可愛らしくて…余談だけどグルシンスカヤがグランドホテルにのロビーに入ってきたときにロシア語で話しかけれられて、私フランス人よ!っていうのが好きなんだけどその時ラファエラはイタリア語でしゃべって私たち全員違う言葉を喋ってる!っていうのが言語の違いだけじゃなくて、人と人との関わり合いの齟齬、みたいな事を感じてとても好き。言語だけじゃなくて結局通じ合えない、みたいな。

早乙女わかばさんのフラムシェンは女神だった…フラムシェンってもっと我儘娘、みたいな女優になるという野心を抱えた強かなみたいなイメージがあったんだけどオットーに対してのフラムシェンが本当に女神の様だ、と思ってしまった。フラムシェン自体も男爵との出会いでの変化があったのだろうなとも思うんだけど。

男爵の珠城りょうさんはお披露目公演という事もあって若さ溢れるチャーミングな男爵で、ちょっと悪戯っぽい感じもあり、あんまり嘘をつきなれてなさそう、人の良さが滲み出てる。あと男爵が脅される相手が軍人?でちょっとびっくりした。体格が良くてすごくスタイルが良いな…としみじみ思った。

私が拝見したRED版の伊礼さんの男爵も大変チャーミングで軽薄で憎めない感じの男爵だったのだけど珠城さんの男爵は幼い感じもあってとても良かった!ラファエラの暁千星さんはとても力強くグルシンスカヤを想うラファエラだなという気がしたのと男爵の死をグルシンスカヤに知らせないように、と伝えて痛みを堪えるようにグルシンスカヤに嘘をつくラファエラがとても良かった。あとラファエラのパジャマがチャイナ服っぽくてとても可愛い…。

あとエリックの朝美絢さんもわああ美しいエリック…こんなホテルマンが居ていいのか…と思ったんだけどラファエラ・エリックが役違いと聞いて朝美さんのラファエラも見てみたいと思ってしまって…。

 

好きなシーンの話

宝塚版での演出がとても好きなところがオットーとフラムシェンが踊るところ、で後ろで踊っている人たちがいるのだけど一人一人相手がいなくてシャドーの状態で踊っててその姿を後ろの壁が鏡になって映されていてあの演出に含む意図みたいな事を考えてとても面白いなと思ってしまった。結局人は1人で踊るしかないみたいな事なのかなと思ったけど鏡に映る誰かを求める…みたいな。勝手な解釈を展開させてしまう。

あとやっぱり群舞が美しい話はなんどでもしたい群舞が美しい。セットに高低差がなくてわりとふらっとなんだけどとてもよく踊る、というか群舞が多い様に感じてそのためなのかなという気もする。振り付けもすごく好きです。

あまりに取り留めのない感想だけどグランドホテルという作品そのものの魅力をまた感じてさらにこの作品が好きになって本当に見に行って良かった。演出違いで見るのも楽しい。