I was stage gazer

星を追う

Patch stage vol.10羽生蓮太郎

略してはぶれん!ハムレットの舞台を昭和の大阪に置き換えてオールメールハムレット。奇しくも同時期にジョン・ケアード演出のハムレット上演中っていうのも面白い。

初日お疲れ様でした。時系列バラバラネタバレありのひたすら長い感想

f:id:a9azzzzz:20170421204307j:image

Patch stage vol.10『羽生蓮太郎(はぶれんたろう)』劇団Patch Official site

すえみつさん経由でPatchを見始めて生で見るのは4作目かな?本当にいい作品だったし、今回は客演入れないで巌窟少年ぶりにPatchのみのお芝居だったらしい。でもとても良かった。巌窟少年はあの時期の少年たち、っていうのを生かした本人たちと近しいところにあるお芝居だったけど羽生蓮太郎はハムレット原作だし色々難しいだろうなと思ったけど良かった。今までやっぱり客演の人凄いな〜とか思う事もあったんだけど本当にPatchだけでもこんなお芝居するんだなっていうのがとても良かった。

二面舞台で真ん中には円形のステージ、本当に最前は近い、飴ちゃんあげられるくらいの距離、近い。すえみつさんお馴染みのキャスパレもぐるぐる回って、しゃがんで1人ずつ立ち上がりながらハムレットでいうところの〜〇〇です!っていう紹介を1人ずつしてからお話に入るのも良かった、入り口をがーんって開け放している感じ。ハムレットである事とPatchの舞台、Patchstageだって事がうまく混ざり合っているような。

 

ハムレットとの役名対照

ハムレット→羽生蓮太郎

クローディアス→羽生黒男

ガートルード→羽生頑子

ポローニアス→歩野宮春

レアティーズ→歩野定春

オフィーリア→歩野親春

ホレイショー→布袋昌吾

尾瀬倉友之助→ローゼンクライツ

桐志田興喜→ギルデンスターン

羽生秀太郎→前国王

蛍原徹→???

ハムレットを漫画で読んだ程度の私には蛍原がハムレットなどの役なのか分からない…羽生蓮太郎では黒男の借金取りのヤクザ。

 

最初みんなでかくれんぼをしているシーンから始まるんだけど不穏な感じの始まり方…!と思ったらこのかくれんぼが凄くいい感じで効いてくる…このかくれんぼがラストまで効いてくる感じずるい!すごい!みんながまーだだだよ、っていいながらわちゃわちゃしている感じと、まーだだよ、って言いながら段々蓮太郎から離れていってしまいには蓮太郎が1人ぼっちになってしまう感じがすごく寂しかった。

羽生蓮太郎にはハムレットのオフィーリアが居ない。ヒロイン不在のお芝居なんだけどここで生きて来るのがオフィーリアポジの親春…!

蓮太郎になんで探しに来ないの?って話しかけにくる親春が可愛いし、ここで交わした約束をずっと大人になっても忘れない2人がいるのもいい。親春は蓮太郎に明日も次の明日もずっと遊んでね、ってねだってずっと遊んでやる、って蓮太郎が答えるのだけど…蓮太郎が(ハムレット)かくれんぼの段から既に死を思っているというかセミの死骸を見ながら夏の終わりを思って、明日が来る事が当たり前じゃない事を知っていて、かくれんぼの鬼をしながら鬼が見つけなればみんなずっと隠れたまんまじゃないのかとか、この感じで分かる蓮太郎の人となりというか役の感じが凄く良いなってちゃっきちゃきの関西のお兄ちゃんって感じなのに暗さがある。

親父に明日は来なかった、でハムレットの通りにすでに羽生蓮太郎のお父さん(秀太郎)は死んでいるところから。ハムレットのお話の通りに進んでいくから墓場でお父さんの幽霊に出会って黒男(クローディアス)とガートルード(頑子)に父親は殺された事を父親の幽霊から明かされるんだけど羽生秀太郎の幽霊の姿はハゲヅラ寝巻き鼻眼鏡の一升瓶抱えた三角巾つけた幽霊だし…何なんだあの幽霊は。墓石の役をキャストがやるから\ここは墓地/\墓石/とかやるし墓石めっちゃ喋る。墓石で笑わせてくるってだいぶ力技…めちゃくちゃ関西弁で突っ込むし笑わせようとしてくる。ハムレットなのに。ハムレットなのに蓮太郎の実家はホルモン屋で酔っ払ったおっさんたちが常にたむろしてる。このおっさん役を兼役でやるのも面白いんだけどモブでもついつい見ちゃうよね。

基本的に素舞台、セットなしでセットはホルモン屋のセットくらいしかないし、そのセットをわちゃーっとキャストが組み立てるんだけどアンサンブルなしでみんな役付きなのにモブも兼役でセットもやって、で本当に忙しい。セットが簡素でちょっとどうだろう?と思ったけどすえみつさんの演出はやっぱり照明の使い方が綺麗だ…本当にふとした時の照明の感じがめちゃくちゃいい。セットも何にもない空間って割と見てるのがつらいんだけどはぶれんはそんなに辛くなかった。

その円形ステージをめっちゃぐるぐる回るバターになるくらい回る。いろんな場面でぐるぐる回る。黒男と蓮太郎の追いかけっことか小さい会場をひてすらぐるぐる。竹馬で追いかけっこしたり、縄跳び使って追いかけっこしたり、人馬を跳びながら追いかけっこしたり、体力勝負なのか、このお芝居。

そのホルモン屋の板とか椅子とかを組み合わせて蓮太郎と黒男が追いかけっこする道を作る!途中ずっと同じところをぐるぐるさせられて戸惑う黒男!(この演出はすえみつさん主宰のぴーすぴっとという演劇ユニットの悪辣というお芝居でも使われてる演出で、それはどんどん椅子を並べていって道を作る、崩れていく様も椅子で表現するんだけどその演出がここでもー!って感じで生で見られて良かった 悪辣は映像貸してもらって見た)この演出をPatchでやるのも良かった…すっごく大変だと思うんだこの演出。

 稽古動画が上がってるんだけどこんな感じの演出。

www.youtube.com

 

で、とても好きだったのが親春はオフィーリアだから死んでしまうんだけどその親春の死のシーンがとんでもなく美しくて、もう美しさしかない。橋の欄干から月に向かって手を伸ばして身を乗り出して川に落ちて死ぬんだけどこの演出がめっちゃ憎い…飛んでるように見えるし何なら本当に月に手が届いてる。本当に美しい。全体的に泥臭いというか昭和のざわざわした感じとかこんな町なんで出ていかないんだとか言う蓮太郎の鬱屈した想いとか蓮太郎は東京の大学へ行っていたけどそこでも上手く周りに馴染めなかったとか、笑えるお芝居ではあるけど全体的に暗さが漂うんだけど、でもその中での親春の美しさが一段と際立つ…。親春だけ子供のままで周りは大人になってしまったけれどいつまでもあの頃のまま。その純粋さが凄く美しいし、ずっと蓮太郎の事を思って父の復讐のために生きる蓮太郎を救ってあげたいとする親春だ。おかしくなってしまったって言われた蓮太郎と仲良くしてやってね、って頑子に言われてからずっと蓮太郎のそばにいようとする、ちょっと思い出すのは巌窟少年のマシマシ(Patch stage vol.2)なんだけどあの子も純粋無垢故に命を落としてしまう子だった…そんな親春が月の石を取ろうとしたのはもう大人になったからかくれんぼはしないよ、って定春に言われてじゃあ万博に月の石を見に行こう、って言われてそれなら羽生くんも一緒に、って定春にお願いしたという前日譚があって黒男を刺そうとして宮春を刺してしまって捕まった蓮太郎の為にしてあげられる事は、”月の石を見せたい”で、何から何まで蓮太郎のためにというかずっと子供の頃の事を忘れられない、子供のまんまの親春がほんとーに良かった。ヒロイン不在でどういうか使い方をするのかなど思ったけど下手なヒロインよりもよっぽど美しい…。無知で無垢で誰よりも純粋で〜って上手い使い方だなって…。飛田◯地の話をされても飛田◯地でかくれんぼしたい!っていう親春くん…おねーさんたちとかくれんぼするのか…。

親春がとても良かった、ってなるし親春定春の兄弟もめちゃくちゃ可愛かった。親春定春宮春の歩野家もとても良いのだけど。歩野家推しなのかな…24歳で55歳を演じます!演じきれてません!とかネタにするけどいい加減なおっちゃんめっちゃ良かった本当にああいうおっちゃん居そう。

定春蓮太郎の関係とか昌吾と蓮太郎の関係とかの関係性もめっちゃ良くて触れておきたいのだけど中の人の関係性とかでもちょっと見てしまうよねあれそれ。

ハムレットは事前に漫画程度でちらっと読んだんだけどどうにも鬱屈した話だなぁと思っていたんだけどハムレットの要素を入れつつ、(ちゃんとボローニアスこと宮春に魚屋じゃなかった?っていうシーンがあってこれ関西のお兄ちゃん達の芝居でも違和感ないなってなぜか感動した。)昭和の大阪が舞台だから突っ込み入れずにはいられない人たちとか、ゴミゴミした泥臭い感じもありつつ、夢は夜ひらくとかズンドコ節を歌い出す昭和感(ホルモン屋でカラオケが始まるという使い方)の出し方も面白かった。全員平成生まれのPatchが演じるごりごりの昭和感っていうのも面白くて。

全体的に笑わせようとしてくるんだけど、劇中劇でハムレットのくだりのちゃんとした台詞(関西弁でない)のシーンもあって関西弁がポンポン飛び交うお芝居での突然のハムレットシェイクスピア!ってあの硬い感じがすごくエッセンスとして効いてとても良かった。オゼキリによるハムレット。あそこの長台詞聞かせるとこめっちゃ大変なのではと思う。to be or not to beをなんて訳すか、に色々な解釈がある、というのがこのお芝居の本質っぽい部分なのかなと思った。これを悲劇とするのか?喜劇とするのか、はここの解釈の部分によるのかな?という感じ。蓮太郎的にはどうせえっちゅうねん、らしい。まさに蓮太郎がどうせえっちゅうねんっていう想いを抱えて色々あれこれ悩む苦しむお話だったかなって。で、ここの場面から凄くピリッとする。緊張感が増す。ここで黒男の態度を見て確信を得た蓮太郎が黒男を殺す決心を固めるのだから緊張感のあるシーンでないといけないんだけどそこまで行くまでの空気感をガラッと変えるのが…!包丁持って黒男を追いかける蓮太郎。\それはホルモン切る包丁であって人を切る包丁やない!!/そういえばこれシェイクスピアのお芝居だった!って思い出した。わざわざハムレットに言及するのも面白いな〜蓮太郎がハムレットのお芝居を見てまさに俺はハムレットだ…ってなるんだけど結末はハムレットとはちょっと違ってボローニアス(宮春)は刺されるけど死なないし、明日は必ずやってくる、生きてさえいればみたいな終わり方でとても良かった。死ななくていい人が死んでしまう、ってハムレットのお芝居を見て嘆く蓮太郎が居てくれるのも良かった。あんなに死を想う子だから死ぬんじゃないかと思ったら蓮太郎もちゃんと生きていてくれるからそこも安心した…。

親春の葬式で定春が蓮太郎に親春は今かくれんぼしてるから親春を探して欲しい、っていうのはなく。泣かせる…。Pacthに泣かされるなんていや幽悲伝は泣いたかもしれない。ずっと隠れてるしずっと探しつづけるってずっと遊んであげるんだっていうあの日の約束とか、親春の事をずっと忘れないっていう約束。明日のジョーの話がちょこちょこ出てくるし親春のお葬式で殴りあう定春と蓮太郎が明日のジョーっぽい。これ原作だとレアティーズとハムレットの決闘のシーンだけど羽生蓮太郎で見ると親春を死なせてしまった事でどうにも自分たちに親春を死なせてしまった痛みを感じさせてくれっていうシーンなのも良かった。

作品の中で象徴的に出てくる万博の”月の石”が盗まれたっていうニュース音声が流れてきて?って思ったら親春が身を投げた欄干で話をする蓮太郎と昌悟。で、蓮太郎が手に持っていた何かをその川へ投げ入れた。月の石を盗んだのは蓮太郎だった、っていうのがとても憎い…なんていう結末なんだ

日替わりゲストが色々ぶっ込んでくるんだろうなっていう蛍原のシーンはまだ初日だから固さがある!と思ったからこれからもっと笑いをかっさらってくれるシーンになる事を期待…。蛍原の部下のヤクザが普通?のしょーりと小指のテツなの面白かっためっちゃ小指踏んでくるテツ…!(しかもこれが親春との兼役なのも面白い)こういう小ネタがさぁ…!ただ頑子の蓮太郎のヅラはどうにかならんかったのかなと思った…もうちょっといいウィッグを使ってくれると…衣装とかは本当に良いのに…

1回しか見られないかなと思ったけどもう1回見られそうなのでじっくり楽しみたい。本当に凄くいい作品だなって本当に思うし、それを演じきれるPatchの成長もあつい(そんなに見てないけど)